GoJekやGrabのクラウドキッチンは店内食事スペースなし、持ち帰りもなしで、スマホアプリ上で注文を受けて宅配を行うビジネスで、零細飲食業者や主婦層にとって少ない資本でビジネスを始める機会を提供するという自立支援の可能性も含んだビジネスモデルです。 インドネシア市場でのビジネスで重要な要素は価格とブランド、コネの3つと言われますが、必ずしもこれらを持ち合わせない日本人はどのように戦えばよいのか。これはインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人にとっての共通の問題意識かと思います。 続きを見る
インドネシアのビジネス
インドネシアのクラウドキッチンの現状
クラウドキッチン(サテライトキッチン)はEat In(Dine In)スペースなし、持ち帰り(Take Away)もなしの飲食店が、スマホアプリ上で注文を受けてデリバリーを行うビジネスです。
2020年2月時点で、インドネシアではGrab Kitchenが先行して40店舗出店していましたが、インドのRebel FoodsのノウハウとGoJekのインドネシア市場や中小零細商取引の複雑さに関するビッグデータを融合させて、合弁会社として生まれたGoFood Kitchenが、20店舗出店で追いかける側にあります。
同じオンライン販売ビジネスでも、一般の物販とは違って料理の配送の場合は、消費者市場に合わせた立地戦略が重要となり、リアル店舗と同じように「支店を出す」という概念があり、Grab Kitchenは2020年6月現在インドネシアの主要5都市で利用可能です。
- 配送距離を考慮してパートナーが消費者により近い場所に存在できること
- 1か所の集合キッチンで周辺の消費者のニーズにより多く対応できること
GoFood Kitchenは、来月2020年7月に閉鎖が決まっているGoFood Festivalと同時に立ち上げられ、パートナーに対してスペースレンタル料は取らず、売上からの完全手数料制を採用しており、一方で個人が自宅のキッチンを使ってクラウドキッチンのビジネスが出来てしまうとサービスの質が下がる恐れがあるので、GoFoodへの加盟の審査は自宅ではない商業スペースのキッチンがあることを条件としているはずです。
-
-
GojekがGoLife事業閉鎖に伴い430名を解雇【事業の選択と集中】
GoJekはコロナ禍によりGoLifeの物理的接触サービスが制限されたことで、輸送、食料配達、電子マネーの3事業に注力する選択と集中戦略に転換しましたが、事業価値の最大化とコスト削減のメリットがある反面、長期的需要を見誤った場合の損失が大きいと言われます。
続きを見る
インドネシアのクラウドキッチンの将来性
一般的に飲食店の出店の際に最も重要な要検討要素は「立地」の問題かと思いますが、GoFood KitchenやGrab Kitchenのパートナーになれば、その最大の検討要素をGoJekやGrabというデカコーン企業があらゆる情報を駆使して選定した、最も戦略的な場所に出店することが出来ますので、パートナーは純粋に料理の味や衛生面の質で勝負できるというアドバンテージがあります。
- キッチン・水道・排水設備・電線・ガス管などの基本的な設備を備えているため、店舗の賃料や改修コストが削減される。
- デリバリーに特化したビジネスとしてGoJekやGrabの既存の配送手段を利用できるので運用コストが削減される。
- 飲食店ビジネスで固定費の大きな割合を占める賃料の前払いがない。
- スマホアプリでオーダーを受けてから配送までのスピードが速く、料理以外の顧客サービスは保証されているため、固定のリピート客(langganan)を獲得しやすい。
- 他都市への拡大出店の際にもGoJekやGrabのクラウドキッチンを利用することができるので、最適の場所が保証され、オーダーを受けてからデリバリーまで最高のサービスを提供できる。
欧米では外から料理を注文するよりも、家庭で料理をする傾向がありますが、インドネシアを含む東南アジアでは、若い世代を中心に外から注文することに抵抗がないため、利便性重視のオンデマンドベースのサービスがさらに成長していく可能性が高いと思います。
またインドネシアの国民性という観点から考えた場合、かつて2000年代にAFI(Akademi Fantasi Indosiar)やIndonesian Idolで一般の歌自慢の素人から多くの芸能人が生まれたように、「ギャップ萌え」や「サクセスストーリー好き」が多いので、GoFoodやGrabが地方に埋もれている美味い郷土料理や一般家庭料理を作る人材を発掘するような企画を出せば、全国的に盛り上がるのではないかと思います。
このようにクラウドキッチンはインドネシアの飲食業界を活性化させ市場を成長させると同時に、零細飲食業者や主婦層にとって少ない資本でビジネスを始める機会を提供するという自立支援の可能性も含んだビジネスモデルだと考えます。