会計システム

ポストコロナ禍に向けた収益改善と業務改善(下)【コストセンターからプロフィットセンターへという発想の転換】

コストセンターからプロフィットセンターという発想の転換

毎月の生産でいくらコストがかかったかを計算する原価計算(実際原価)業務は、インドネシアではシステム化されている事例は少なく、細かく計算すれば時間がかかり、どんぶり勘定だと見たい情報が見られず、コロナ禍の影響で時間に余裕が出来た今は収益改善という観点から原価計算のやり方を見直す絶好の機会です。

ただし収益(利益)とは「売上-費用」ですから、費用という一面からだけから見てしまうと、例えば費用ばかりがかさんでいるかのように見えた事業部門で、実際にはその費用が多くの売上を上げる原動力になっている場合があるため、収益改善という観点から原価計算の切り口を見直す場合には、製造原価だけでなく出荷ベースの売上原価に販管費まで集計したものを売上から差し引くことにより、営業利益が見られる管理会計的要素がより重要になります。

  • 製造原価=月初仕掛品在庫+当月発生製造費用-月末仕掛品在庫
  • 売上原価=月初製品在庫+当月製造原価―月末製品在庫
  • 売上総利益(粗利)=売上-売上原価
  • 営業利益=売上総利益-販管費

収益改善のための原価計算では、製造原価から売上原価へ、売上総利益(粗利)から営業利益へ、そのためにはコストセンターからプロフィットセンターへという発想のグレードアップが必要です。

経営者の視点で業務システムを導入するということ 【損益を管理する単位に適応させた実装】

 

インドネシアの場合は一向に収束しないコロナ感染拡大はもちろん、それ以前に変動が激しい為替と金利、毎年高騰し続ける最低賃金UMK(Upah Minimum Kabupaten)、サプライチェーンの中での力関係が大きく影響する調達の難しさ、輸出入時の通関手続きの不明瞭性、税務リスクなど、費用を押し上げるインドネシア独特のリスクが多く、一方で生産年齢人口が従属人口の2倍以上ある人口ボーナス状態が2030年まで続くという売上を押し上げるポテンシャルもあります。

インドネシアの自動車産業の潜在能力【原材料の現地調達率向上と生産の高付加価値化で輸出競争力を高める】

 

ある意味でハイリスクハイリターンとも言えるこの国で、売上も費用もサプライチェーンの中をモノとカネと情報が市場原理で流れる経済活動の中で決定されるところに収益を上げ続ける難しさがあるため、ポストコロナ禍での収益改善のための方策とはコスト削減だけでなく、原価を正しく把握するのはもちろん、高付加価値事業への資本集中を進め、生産性を向上させるという事業構造の転換までを含めて検討されるべきかと思います。

原価計算の見直し

受注単位の原価計算(個別原価計算)とは異なり、マスプロダクションの原価計算(総合原価計算)の場合は、収益改善のための切り口(事業部など)から見た最下位の集計項目がコストセンターであり、部門や工程、機械、製品グループなどであることが一般的です。

総合原価計算の累加法と非累加法 【勘定連絡図に沿って自工程発生費用を次工程投入費用とする累加法】

 

現状の原価計算業務の流れと内容を知るために最初に確認したい点は以下の3つです。

  • 変動費(直接材料費)の単価として何を使うか?
    ⇒購入時の価格(個別)
    ⇒標準単価
    ⇒総平均単価(総合)
  • 固定費(労務費・製造間接費)をどう計算するか?
    ⇒標準単価
    ⇒実際発生額をコストセンターに集計し按分:工数・稼働時間の集計が必要。
  • 原価計算の基準は?
    ⇒投入数量ベース:何を(子)どこに(親)に投入したかという実績の紐付きが必要。
    ⇒生産数量ベース:部品構成表(BOM)の標準使用数x標準単価

ポストコロナ禍に向けた収益改善と業務改善(上)【システム化で業務データの流れと構造を変える】

 

固定費の計算での標準単価を使用する場合には、労務費の場合は賃率(1分あたりいくら)x能率、製造間接費の場合は配賦率(1個あたりいくら)という、賃率や配賦率を事前に別途計算しておく必要があります。

標準原価と実際原価を同じ仕組みで理解する 【一次配賦比率の計算、一次配賦、配賦率の計算、原価費目の積上計算という流れ】

 

業務の流れを再構築する際の基準は「最小の作業負荷で最大の成果が出る」でしたが、変動費と固定費の計算に手間暇のかかる実際発生額をどこまで採用するかの基準は「それが収益改善の指標となりうるか」の1点のみであり、この目的に合致しないのであれば実際原価計算の事前に準備できる標準単価を極力利用すべきだと考えます。

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