インドネシアのビジネス環境

インドネシアへの直接投資の誘致【オムニバス法を構成する雇用創出と租税規則の改正】


日本からインドネシアへの直接投資が減少した理由はコロナ禍だけでなく投資環境自体の問題

先日のジェトロ主催のウェビナーでの投資調整庁(BKPM)担当者の話では、日本からのインドネシアへの投資額が落ちており、通常はシンガポールについで日本は2位であるのに、2020年の第2四半期ではシンガポール、香港、中国、日本、韓国の順になっていました。

2020年第2四半期のインドネシアへの海外直接投資(FDI=Foreign Direct Investment)実績額(BKPMウェビナー資料から)

地域別ではジャワ島への投資が全体の50%弱を占め、中でもTol(高速道路)沿線に工業団地が連なる西ジャワ州への投資が最も多くなっています。

本日、在日インドネシア大使館と投資調整庁主催による「新世界経済パラダイムの中のインドネシア:あなたの最高の投資先」という日本人投資家向けのウェビナーで、ルフット(Luhut)海洋・投資担当調整大臣やBKPMのバフリル(Bahlil)長官などから、インドネシアのマクロ経済戦略と政策、投資環境の改善状況について説明がありました。

BKPMも「2019年まで日本の直接投資額はシンガポールに次いで2位だったのに4位にまで順位を下げたのはコロナ以外にも理由があるんじゃないか」「投資環境そのものに問題がある」という認識を持っているようで、中国から他国への移転を検討している140社近くの企業のうち日系企業が21社あり、相対的に土地や人件費が高いというインドネシアの投資環境の問題を解消するために、中部ジャワのBatang工業団地を開発中であり「土地も人件費も間違いなくベトナムより安い、認可もBKPMがサポートすることで短期間で下りるようになる」と力説していました。

中国からの移転を検討中の企業の中で移転先としてのインドネシアの優先順位(BKPMウェビナー資料から)

「インドネシアの投資環境の障害は土地・認可・雇用の3つあるが、日本企業は技術とお金を持ってさえ来れば、あとはBKPMがすべてサポートする、空港にも迎えにいくから」というバフリル長官の言葉から、ベトナムやカンボジアなど投資誘致先国としてのライバル国を意識しているのが伝わってきました。

オムニバス法案の進捗状況

海外からの投資を呼び込むための国内投資環境の整備の目玉であるオムニバス法案は、雇用創出 (CiptaKerja)に関するものと租税 (Perpajakan)に関するものの2つから構成され、現在も国会DPRで連日継続審議中であり、8月施行を目標としていたが現実的には9月または10月にずれ込むようです。

雇用創出に関するオムニバス法(経済特区へのライセンス認可の簡素化)

  • ライセンスの簡素化
    立地許可は統一された一つのデジタル地図を使用し、リスクベースのアプローチ(目的の達成を阻害するリスクを洗い出しそれらの影響を明確にした上で対策を講じ目的達成の可能性を高めるアプローチ)に基づいて判断されます。
  • 投資要件
    投資重点分野の新たな優先順位リストを作成し、投資ネガティブリストを現在の20業種から6業種に簡素化し、外国からの投資に対する開放性を向上させる。
  • 行政
    地方規制と中央規制の重複を簡素化するために権限の一元化を図る。
  • 企業に自由度を与える就業規則
    最低賃金は1年未満の労働者にのみ適用、長期勤務の給与は8ヶ月分を上限、政府は失業者のための職業訓練プログラムも準備、外国人労働者の使用は特別な要件の下で許可する。
  • ビジネスのしやすさ
    最低資本金IDR 50Milyarの撤廃、就労ビザやビジネスビザの取得を容易にする、特許権者のための柔軟性、金属産業の川下化プログラムへのインセンティブ制(報酬)。
  • 研究・イノベーション支援
    国家イノベーションの対外貿易政策支援製品、研究開発と技術革新のための国有企業と民間企業のための特別な割り当て。
  • 制裁
    行政法の制裁措置と刑法の制裁措置の差別化、汚職に対する刑事罰。
  • 土地調達を容易にする
    地域の土地から利用可能な土地への変更が早い、土地変更許可の延長がより簡単、開発中のランドバンク。
  • 投資と国家戦略プロジェクト
    ソブリンウェルスファンド(政府が出資する投資ファンド)の設立、国家戦略プロジェクトに必要な土地の提供、国家戦略プロジェクトに必要なすべての許認可の提供。
  • 経済圏
    経済特区管理者はライセンス、サービス、インセンティブ、ビジネスのしやすさなどを行う権限を持つ、自由貿易と自由港地帯。
  • 中小企業へのインセンティブ
    MSMEのために使用する移転資金の優先順位。

租税規則の改正に関するオムニバス法

  • 所得税の軽減
    法人税:25%(現行)⇒22%(2021~2022年)最終的に20%(2023年)、配当金(Dividend)は非課税。
  • 領土内所得課税の適用
    多国籍企業の配当金は、インドネシアに投資する限り、非課税。
  • 国内税の適用
    インドネシア人が183日以上海外で働くと該当国の国内税が課せられる可能性があり、183日以上インドネシアで働く外国人にはインドネシア国内税が課される。
  • コンプライアンスを高めるための規制
    制裁の調整を行い、コンプライアンス違反の罰金の利息は2%(24ヶ月間)から相場に調整する。
  • デジタルサービスへの課税
    従来の事業体への課税と同様のデジタルサービスへの課税を調整、インドネシア事務所を持たない多国籍デジタル企業も課税対象となる。
  • 税制優遇措置
    タックスホリデー、税務手当、経済特区などの税制優遇措置を一つのクラスターにまとめる。

産業の川下化によって付加価値のある製品を生産

ニッケルに加工して付加価値を付ける川下化のイメージ(BKPMウェビナー資料から)

ルフット大臣がオムニバス法以外にインドネシアへの投資の魅力を強調していたのが鉄やニッケルなど金属鉱物の川下化(downstreaming)であり、インドネシアはニッケルを原料とする電気自動車用(EV=Electric Vehicle)バッテリー製造の海外企業を誘致し、生産拠点化を目指しています。

国内で加工し付加価値を付けて川下産業で国際競争力のある製品にすることで「インドネシアは国際的なサプライチェーンに乗る」「原料の輸出はもう嫌だ(Tidak mau)」という言葉が印象的でした。



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