インドネシアで法人を設立してから運営を開始するまでの流れ【ローカルPT設立手順2018年編】

本記事の概要

会社の基本事項(会社名や事業内容、役員、株主など)を考えている間は期待と不安が入り混じり、オフィスを借りる賃貸契約を結んで賃貸費用を振り込んだ時に初めて自分の懐が痛むことを実感し、法務管理局に会社名をチェックしてもらいSKを申請し、NotarisでAKTAを作成し管轄の役所にてSIUPやTDPの申請を行う一連の行政手続き期間を経てとりあえずペーパーカンパニーが出来たことでホッと一安心し、NPWPの手続でもって納税の義務が発生することに若干の不安を覚え、銀行で口座開設の手続をすることで営業活動しないとヤバイという危機感が生まれる。インドネシアでローカルPTを設立する際の心理状態はこんな感じで変遷します。

最初に決めるべき会社についての基本事項


今年2018年6月に、ジャカルタの東12kmに位置する西ブカシ地区(Bekasi Barat)にローカルPTを設立しましたが、以前2012年に同じくローカルPTを設立したときと手続内容はほぼ変わっておらず、違ったのは以下の3点くらいです。

  1. 外国人を雇うための資本金最低額が1milyarに上がったこと(以前は資本金501juta以上で最低4分の1の銀行振込みの証拠が必要)。
  2. 会社名に英語が使えなくなったこと。
  3. 従業員に新社会保障制度BPJS-Kesehatan(健康保険)とBPJS-Ketenagakerjaan(労働保険)加入が義務付けられたこと。

なにはともあれ設立する会社の名前、役員、株主と持ち株比率などの基本事項を決める必要がありますが、ローカルPTの場合は、外国人は役員の一人に名を連ねることはできるとはいえ、Chairman(Komisaris)とDirector(Direktur)の最低2名のインドネシア人の役員が必要であることには変わりなく、未だに外国人は株主(Pemegang Saham)にはなれません。

  1. 会社名
    会社名に英語は使えなくなりました。
  2. 事業内容
  3. 資本金
    2018年6月現在、外国人を1人雇用するために資本金1miliyarが必要です。労働移住省(Departemen Tenaga Kerja dan Transmigrasi)に外国人雇用計画書(Rencana Penggunaan Tenaga Kerja Asing=RPTKA)を提出し、労働移住省にビザ発給推薦状(TA-01)の発行を申請し、入国管理局(Imigrasi)にビザ発給推薦状が転送されたタイミングで、入国管理局にビザ発給許可書(VTT)を申請し、シンガポールのインドネシア大使館でIndex312を取得し、インドネシア入国後にITASオンラインの手続(昔はKITAS)を行い、並行して労働移住省に労働許可証(Ijin Menggunakan Tenaga kerja Asing=IMTA)を申請し、外国人労働者雇用補償金(DKPTKA)1200ドル/年を払う、という複雑怪奇な手続の流れは今も変わっていません。
  4. 会社の住所
    ビルの管理事務所と締結済みの賃貸契約書(Perjanjian Sewa Menyewa)をもって、会社の住所を管轄する地方政府(Pemerintahan Daerah)から、会社所在地証明(Domisili Perusahaan)を発行してもらう必要があります。
  5. 株主と持ち株比率
    役員と株主は同じである必要はなく、株主は法人でも構いませんが、全員の納税者番号NPWP(Nomor Pokok Wajib Pajak)と住民登録証e-KTP(Kartu Tanda Penduduk)のコピーが必要になり、Notarisに発行してもらう会社設立証明書(AKTA Pendirian)にはe-KTPの住民識別番号NIK(Nomor Induk Kependudukan)が記載されます。
  6. 役員
    インドネシア人のChairman(Komisaris)とDirector(the executive officer)が必要であり、Directorはメインで日常業務に携る人になります。

役員と株主の名前は、後に司法・人権省(Kementerian Hukum dan Hak Asasi Manusia)から発行される決定書SK(Surat Keputusan)Pendirianや、Notarisが発行する会社設立が法的に有効であることを証明する会社設立証明書AKTA Pendirianに記載されます。

地方政府から発行される会社登録証TDP (Tanda Daftar Perusahaan)や営業許可書SIUP(Surat Izin Usaha Perdagangan Menengah)には、会社の運営の中心となるDirekturの名前だけが登録されます。

法人(Badan Hukum)化の行政手続きを行うために準備するもの


会社の基本事項が決まり、ビルと賃貸契約を結び、会社の所在地が確定してから、以下の書類をもってようやく法人化のための行政手続きが始められます。

  1. 役員2名(KomisarisとDirektur)と株主(Pemegang Saham)の住民登録証e-KTP(Kartu Tanda Penduduk)と納税者番号NPWP(Nomor Pokok Wajib Pajak)のコピー。
    Notarisに作成してもらう会社設立証明書(AKTA Pendirian)と、法務管理局Ditjen AHU(Direktorat Jenderal Administrasi Hukum Umum)から発行される司法・人権省の大臣の決定書類SK(Surat Keputusan Pendirian)に記載される人物すべてに対して必要です。
  2. ビルの管理事務所と交わした賃貸契約書(Perjanjian Sewa Menyewa)。
    会社の住所を管轄する地方政府から、会社所在地証明書Domisili Perusahaanを発行してもらうのに必要です。
  3. オフィスの写真
  4. 土地・建物税PBB(Pajak Bumi dan Bangunan)の最終支払い時の支払伝票。
  5. 店舗兼住宅Ruko(Rumah Toko)である場合はIMB Bangunan(Izin Mendirikan Bangunan)が必要。

行政手続き上で法人として必ず取得すべき書類


大まかな流れとしては、オフィスの賃貸契約が完了したら、法務管理局に会社名を申請し確定させ、行政書士(Notaris)に会社設立証明書(AKTA Pendirian)を作成してもらい、法務管理局から司法・人権省の大臣による決定事項記載書(SK)を取得します。

一方で、会社所在地を管轄する地方政府(Pemerintahan Daerah)から会社所在地証明書(Domisili)を取得し、地方政府から会社登録証(TDP)と営業許可書(SIUP)を取得し、税務署から納税者登録番号(NPWP)を取得します。

AKTAやSKには会社の正式な住所までは記載されないため、Domisiliの取得のタイミングはTDPやSIUP取得のタイミングに合わせることになります

    1. Cek Nama Perusahaan
      正式名称はBukti Pesan Nama Perseroan Telah Memperoleh Persetujuan Menteri(大臣による会社名の承認証)であり、会社名が法的に有効なものかどうかのチェックが、法務管理局Ditjen AHU(Direktorat Jenderal Administrasi Hukum Umum)にて行われ、承認されたことを証明する書類です。
    2. AKTA Pendirian Perseroan Terbatas
      会社設立証明書であり、AKTAとは土地売買(AKTA Jual Beli)や結婚(AKTA Pernikahan)、会社設立(AKTA Pendirian Perseroan Terbatas)など、声明や承認、決定などに法的拘束力を持たせるために、Notaris(行政書士)が作成する証拠書類です。
    3. SK(Surat Keputusan Pendirian)
      会社設立について、司法・人権省の大臣による決定(Keputusan Menteri Hukum dan Hak Asasi Manusia Republik Indonesia)内容書類です。
    4. Domisili Perusahaan
      会社所在地証明書で、正式名称はSurat Keterangan Domisili Usaha/Perusahaanです。
    5. TDP(Tanda Daftar Perusahaan)
      会社登録証であり、Domisiliの住所を管轄する群(Kecamatan)や県(Kabupaten)などの行政政府にて発行されます。
    6. SIUP(Surat Izin Usaha Perdagangan Menengah)
      営業許可書であり、TDPと同じくDomisiliの住所を管轄する行政政府にて発行されます。
    7. NPWP (Nomor Pokok Wajib Pajak)
      納税者登録番号であり、初期登録時には付加価値税(VAT)課税対象会社(Pengusaha Kena Pajak)の登録がなされていないため、NPWP上の納税義務のある税金は所得税PPHのみがチェックされています。

      • 申告税(PPh sendiri)
          • PPh Pasal25
            前期の課税所得から算出された今期の月払い法人税。
          • PPh Pasal29
            今期の支払い済みPPh25の合計と、今期の売り買いで発生したPPh21, PPh22, PPh23, PPh24のプラスマイナス差分を、年度末の年次納税申告書SPT(Surat Pemberitahuan Tahunan)に記載し、不足分がある場合に発生する納税額。
          • PPh Final
      • 源泉税(Pemotongan dan Pemungutan PPN)
          • PPh Pasal4 ayat (2)
            アパートや家の賃貸収入に対して、借りる側が10%源泉して納税する税金ですが、オーナーの納税意識が低く賃貸契約時の金額にこれが考慮されていない場合は、借りる側が別途賃貸金額の10%を自己負担して納税する必要があります。
          • PPh Pasal 15
          • PPh Pasal 19
          • PPh Pasal 21 個人所得税
          • PPh Pasal 23 国内サービス源泉税
          • PPh Pasal 26
            出張者への給料支払い、海外サービス購入、本社へのロイヤルティなどにかかる20%の源泉所得税。

ここまで書類が揃えば、とりあえずペーパーカンパニーとしての法人の設立は完了です。

付加価値税対象会社(PKP)か非対象会社(Non-PKP)かの決定


会社を付加価値税対象会社(Pengusaha Kena Pajak)にする場合、売りの場合Invoice発行時に10%の付加価値税VAT(PPN=Pajak Pertambahan Nilai)を、VAT-Out Payableとして負債計上しFaktur Pajak(Tax Invoice)を発行し、買いの場合仕入先から届くFaktur Pajakにある10%分をVAT-In Prepaidとして債権計上し、売った分が多くプラスなら翌月末までにオンライン付加価値税申請システムe-Fakturを通して納税し、買った分が多くマイナスなら年度末に還付請求または翌事業年度に繰越します。

  • 売りの場合
    • (借)A/R 110    (貸)Sales 100
    •             (貸)PPN Out Payable 10
  • 買いの場合
    • (借)Purchase 100    (貸)A/P 110
    • (借)PPN In Prepaid 10

一般的にPKPにするかNon PKPにするかの判断は「年間売上が4.8Milyar以下の中小企業に該当するかどうか」が基準となりますので、会社設立当初に売上が見込めない場合はNon PKPにしておいて、売上が増えて会社の規模が大きくなってからPKPに切り替えることもできます。

年間売上4.8Miliyar以下の会社は中小個人事業主UMKM(Usaha Mikro, Kecil, dan Menengah)と呼ばれ、課税所得に対してかかる税金として、経営成績である利益に対してかかる法人所得税(PPh25)ではなく、事業主に対して一律公平にかかる事業税のような 外形標準課税(Pro forma perpajakan standar)が1%かかります。

会社設立当初はNon PKPでいくと決めた場合には、購入時のPPN-In Prepaid(債権)がかかり売上時にPPN-Out Payable(負債)を計上しないので、経理上PPN-In Prepaidが残りっぱなしになるため、購入時のPPN-Inは負債ではなく費用計上して、仕入原価に乗せることになります。

逆に相手取引先の立場からすると、自分の仕入先がNon_PKPの場合、売ったときに発生したPPN-Out Payable(負債)を、買ったときのPPN-In Prepaid(債権)で相殺できないため「うちはPKPとしか取引をしません」と言いたくなるでしょうから、会社設立当初であっても営業活動に支障が出ないように、付加価値税対象会社にするという選択もあります。

法人設立の行政手続き完了後に行うこと


ここまでで必要な行政手続きは完了し、法人として取得すべき書類も揃っているので、会社の営業を開始することができますが、そのためには会社の銀行口座(当座預金GIROまたはビジネス用口座)を開設し、資本金を振り込む必要があります。

以前はAKTAやSKに記載された資本金額の最低4分の1を振り込む必要がありましたが、現在は特にチェックされるわけではないため、運転資金として必要な額だけ振込み、これまでに会社設立のためにかかった費用で、会社の経費と認められるものを費用計上します。

例えば会社設立時には資本金を当座預金に振り込みますが、必ずしもAkta Pendirianに記載された額面どおりに振り込まれるとは限りませんので、差額は株主債権(Shareholder Receivable)という資産勘定の計上します。

  • (借)当座預金 330    (貸)資本金 1,000
  • (借)株主債権 670

株主が会社設立前の会社設立費用や固定資産購入などで100出費していた場合は、この株主債権を減額してあげます。

  • 費用 100    株主債権 100

営業開始当初の初回のP/L作成時に売上が上がっていない場合には、出費した分だけ赤が出ていると思いますので、P/Lの損益に100の当期損失を計上します。

  • (+) 収益 0
  • (-) 費用 100
  • —————-
  • 当期損益 (100)

当期損失をB/Sの純資産の部に反映させることでバランスします。

  • 当座預金 330
  • 株主債権 570
  •         資本金 1,000
  •         当期損益 (100)

既にNPWPを取得している以上、取得月から税務署への申請が義務付けられ、仮にPPNや法人税は初年度は毎月課税所得ゼロ(Nihil)として申告しても、従業員の個人所得税(PPh21)を会社負担にしている場合は、年度末の年次納税申告書SPT(Surat Pemberitahuan Tahunan)をもって納税する必要があります。