インドネシアで雇用関係を終了させるプロセス

インドネシア時事問題

インドネシアで雇用関係を終了させるプロセス 【すべては「インドネシア共和国法律2003年第13号」が基本】


クビにするには正当な理由と手続きが必要

最近、ある会社の従業員Aが経営者の方針に反対したことで怒りを買い、経営者は感情に任せてPHK(Pemutusan Hubungan Kerja 解雇)を宣告してしまい、従業員Aはこれが不当解雇であると弁護士を立てて訴えたことで、経営者はその解雇の理由が警告書(Surat Peringatan)を出す猶予もないほど悪質であったということを証明しなければならなくなったという事例に偶然出会いました。

従業員Aは不当解雇だとして労働省DISNAKER(Dinas Tenaga Kerja dan Transmigrasi)に訴え出たり、弁護士を雇って法廷闘争に持ち込む権利がありますが、お互いにとって時間と費用の浪費になるため、事前に金銭で手打ちするのが一般的です。

インドネシアで従業員を解雇する際には、労働法UU No 13 Tahun 2003(労働に関するインドネシア共和国法律2003年第13号)に定義されている正等な理由が必要であり、いざ退職が決まった場合には労働法に定められた正当な金銭を支払う必要がありますが、たくさんもらいたい被雇用者側とできるだけ払いたくない雇用者側との間には意見の相違が出てきます。

  1. 就業規則への違反を元に解雇
    まず規律違反が解雇に相当する正等な理由になるものかどうかというところで揉め、次に警告書の有無で揉め、最後に退職手当金額で揉めるといういちばんややこしいパターンです。
    犯罪を犯したりよっぽど重大な就業規則違反でもしない限り、退職手当(uang pesangon)と勤続功労金(uang penghargaan masa kerja)と損失補償金(uang penggantian hak yang seharusnya diterima)の3種類を支払う必要があります。
  2. 警告書(Surat Peringatan)3回後に解雇
    いわゆるSP1、SP2、SP3の順番に3回食らうと正当な解雇理由になりますが、SPには有効期限があり1回目の警告後なら6カ月間、2回目の警告後なら9カ月間、3回目の警告後なら12カ月間が経過すると無効になります。
    本来の手続きとしてはSP1、SP2、SP3という段階を経て、最終的な解雇通告になるのですが、事と次第によってはいきなりSP3を通告することも認められています。
  3. 試用期間3ヶ月内に能力不適格として解雇
    一度雇用契約を結んでしまうと労働者の権利が強くなる代わりに、雇用者側に3ヶ月間の猶予として見極め期間が与えられます。
  4. 自主退職
    退職手当と勤続功労金を支払う必要がないため、雇用者側にとっては一番都合がよい方法です。長年会社に尽くしてきた会計部門のマネージャーを、いきなりカリマンタン島の工場のIT現場担当(本人はIT未経験)に配置換えしたり、勤務態度の悪い運転手を会計部門に配置換えして自主退職を強要するといった陰湿な事例をインドネシアの日系企業でも見たことがあります。

インドネシアの労働法の基本はUU No 13 Tahun 2003(労働に関するインドネシア共和国法律2003年第13号)であり、JJCのサイトに日本語訳があります。

退職金制度が会社の重荷になる

インドネシアでは「労働者の権利が手厚く保護されている」と言われる場合の最大の理由が、この退職金制度にあると思います。

  • 1年未満:退職手当1ヶ月分
  • 1年~2年未満:退職手当2ヶ月分
  • 2年~3年未満:退職手当3ヶ月分
  • 3年~4年未満:退職手当4ヶ月分+勤続功労金2ヶ月分
  • 6年~7年未満:退職手当7ヶ月分+勤続功労金3ヶ月分
  • 8年~9年未満:退職手当9ヶ月分+勤続功労金4ヶ月分

この退職金制度があるため、会社は正社員(karyawan tetap)を抱えることに積極的になれず、しかもバイトやパートは雇用形態として認められていないので、契約社員(karyawan kontrak)や日雇い社員(karyawan harian)の割合を増やそうとします。

ちなみにインドネシアでは外国人が人事関連役職には就くことができませんので、人事担当者は必ずインドネシア人になるのですが、雇用に際しての面接等は収賄の格好の機会になりうるため、日本人駐在員が直接行うことが多いようです。

Adu Domba(内部分裂工作)とは

さて、先の元従業員Aは会社に残っている従業員BとCから、裁判の証拠となる経営者X側の情報を収集しようと画策する一方で、経営者Xはクビにした従業員Aの悪行を探そうと従業員BとCをしつこく追及し、それに耐えかねた従業員Bは自分に降りかかってくる火の粉を払うために、経営者Xに対して

  • CはAと一番仲が良くて、いまだに頻繁に情報交換し合っているみたいですよ。

と情報を流す一方で、元従業員Aに対しては

  • CはXにお前の過去の行状をあることないこと告げ口しているぜ。

と情報を流すことで、元従業員AとCの関係を悪くすると同時に経営者Xの追及をCに集中させ自分だけ逃れようとします。

このように腹黒い人間が行う内部分裂工作のことを、インドネシア語でadu dombaすると言います。





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